「赤ちゃんは生まれつき頭が良いのではない。保護者が話しかけることで頭が良くなっていく」
この本に、今出会って良かった!
すべての子どもの親。
特に妊娠中~3歳頃の子どもがいる方は特に一読をおススメします。
3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ
- 作者: ダナ・サスキンド,掛札逸美,高山静子
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2018/05/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最近育児に関する本を読むのが楽しくて色々と読んでいます。
育児が不安だから…というよりは、赤ちゃんという生き物に興味津々だから。
衣食住、体の発達、心の発達、目・姿勢・歯・足の健康、遊びにおもちゃに運動に…知れば知るほど「子どもを育てる」って超クリエイティブな仕事に感じます。
「赤ちゃん・子供の生きる力・育とうとする能力はすごい・・・」とムスメをただただ尊敬する日々です。
面白い本は全部紹介したいのですが、なかなか文章がまとまりません。
書評って難しい。
最初は日記の延長で思いつくまま書いていたのですが、もっと私の言葉で本の魅力を伝えたい!と考えると袋小路に入ってしまい…
引用が多いと単なるパクリだし、他人の読書体験を奪ってしまいそう。
読んでからどんな風に書評を書こうか頭の中でぐるぐる考えては読み返し…を繰り返して下書きのまま保存された記事がすでに3本。(^^;)
でも、この本は早くたくさんの人におススメしたくてとりあえず書き始めました。
まとまってないけどごめんなさい!
★
著者はダナ・サスキンドさん。
小児人工内耳外科医ー耳が聞こえない子ども達に「人工内耳」の移植を専門に行うお医者さんです。
彼女は人工内耳移植で聴力を得た子どもたちの中に、周りと同じように言葉を喋れるようになる子どもとそうでない子どもがいることに気が付きます。
彼女は手術室を飛び出して子どもたちを「本当の意味で」救う方法を模索し、「3000万語イニシアチブ」プロジェクトを立ち上げました。
生後3ヶ月までの言葉の「3000万語の格差」を無くそう、というプロジェクトです。
「3000万語の格差」とは…ハートとラズリーという2人の児童心理学者の研究の事です。
彼らは貧困の連鎖を断ち切るために、1965年に社会経済的に恵まれない子どもたちに語彙力を増やす就学前教育を施すプロジェクトを立ち上げました。
ーが、このプロジェクトは失敗に終わります。
一時的に語彙は増えましたが、その後の学習には変化が見られず、5歳頃にはプロジェクトの介入効果は消えてしまっていたのです。
これと同じようなことが「学力の経済学」にも書いてありました。
早期教育によって一時的にIQが上がっても7歳前後で周囲との差は無くなる、という実験結果が紹介されています。
彼らはこのプロジェクトが何故失敗したのかを知るためにある研究を始めます。
生活保護グループ~社会経済レベルが高い専門職グループと、経済レベルが異なる42家族の子どもを生後9ヶ月~3歳まで「子どもがしたこと」「されたこと」「子供の周りで起きた事」を観察・録音し追跡調査したのです。
この調査でわかった最も大きな違いは「家族の間で話されている言葉」でした。
高い社会経済レベルの家庭と生活保護を受けている家庭の子どもが親からかけられる言葉をと比べると、4歳までで約3000万語もの「格差」があったそうです。
もっと細かくいうと
「会話の量」
「親の語彙の豊かさ」
「子供に応答する回数」
「言葉による承認の回数」
が圧倒的に多い。
逆に、貧しいグループの子どもたちの方がより多く聞いていた言葉もあります。
「ダメ」
「ストップ」
「やめなさい」
のような「禁止と命令」の言葉です。
貧しい家庭の子どもたちはただでさえ会話の量が少ない上に、
「いい子だ」
「その通り!」
「よし!」
「頭いいね」
のような「承認の言葉」よりも先ほどのような否定の言葉を多くかけられていたそうです。
一見すると「裕福な家庭ほど学ぶ力が高い」ようにも見えます。
が、同等の社会経済レベルの家庭でも言葉の数にはバラつきがあり、それらを比較すると明らかに「言葉の量と学ぶ力が相関している」ことがわかりました。
この研究の6年後に追跡調査をしたところ、3歳までに聞いていた言葉の量が9~10歳時点の言語スキル・学校のテストの点数と相関 していたそうです。
就学前プログラムで語彙を増やした効果は5歳前後で消えてしまったことを考えると、生後~3歳までの家庭内の言語環境の重要さが浮き彫りになりますね。
★
著者のダナ・サスキンドはこの「3000万語の格差」を埋めるためのプロジェクト、「3000万語イニシアチブ」を立ち上げます。
彼女は第一線の研究者たちだけではなく、何千人もの保護者を巻き込んで「社会を変えるには現実的にどうしたらよいのか」話し合い、模索し、カリキュラムを改良し続けました。
科学的に正しいだけではなく、使う保護者にとってのわかりやすさ・利用しやすさを追求したプログラム。
その解説書がこの本です。
プログラムの理論的な根拠の研究の紹介や「なぜ3歳までの言語環境が大事なのか?」の説明、そして具体的に何をしたらよいか、何を気をつければよいかが丁寧に説明されています。
例えば…豊かな言葉やりとりの方法を「3つのT」というワードにまとめています。
- Tune in(チューン・イン 子どもの集中している対象によりそい、一緒に話す)
- Talk more(トーク・モア 子どもとたくさん会話する)
- Take Turns(テイク・ターンズ 子どもと会話のやりとりを続ける)
また、おなじく重要なのが+1つのT。
- Turn off(ターン・オフ デジタル機器のスイッチを切る)
スマホ・DVD・テレビなどのデジタル機器や電子おもちゃは3つのTの機会を奪ってしまうからです。
かといってデジタルをすべて排除することは現実的ではないので、上手な付き合い方の提案もされています。
★
以前読んだ「学力の経済学」もとても参考になりましたが、あちらはあくまで「教育に科学的根拠を取り入れる視点を持ってほしい」と訴える本でした。
教育に関する研究結果の羅列なので、「おもしろい!」で終わってしまうかんじ。
こちらの本はそこから一歩踏み込んで実践しやすいレベルにまで落とし込まれているのが素晴らしい!
実際の会話のロールプレイもたくさん載っています。
これは日本の文化には合わないなとか、これはやりたくないな、と感じる点も多々ありますが、そこはアレンジして取り入れていけば良いかと。
また、子どもは3歳過ぎてるんだけど…という方にも読んでいただきたいです。
ロールプレイの内容をそのまま使うことは難しいかもしれないけれど…
子どもへの言葉の選び方・褒め方・勉強の励まし方などとにかく情報量が多いので、小中学生・高校生のお子さんへの声かけのヒントになると思います。
この本に一貫して書かれているのは
子どもの才能は人種・遺伝・男女差・経済格差だけで決まるのではない。
「才能を開花させる鍵」を持っているのは私たち親の言葉だという「希望に満ちた事実」です。
ただ、テレビ・スマホ・長時間労働と現代日本の家庭内の言語環境は貧しくなる一方のように感じます。
ムスメだけではなく、すべての子どもたちが豊かな言葉の世界で育って欲しい。
まずは自分の家庭から。
そして、この本をこうやって紹介することで一人でもいいから誰かに届けばいいなと願っています。
・3000万語イニシアチブ 本家WEBサイト
…英語からっきしなのでところどころの単語しかわからん~( ;∀;)
すごく簡単な英文だとは思うので、読める方は是非。
英語、勉強したい欲がむくむくと…
・訳者・解説者による「3000万語の格差」に関する最新情報を紹介するWEBサイト
最近の研究ページとかめちゃくちゃ面白いです。
訳者・解説者の方々が日本の家庭の言語環境に抱く危機感と、どうにかしたい!という想いがギュッと詰まっているように感じます。