ふつつかものですよ

結婚4年目 2018年12月女の子を出産。育児関連の書評、日常について綴っています。ふつつかものですが日々開き直って生きています。

【書評】『発達心理学 ことばの獲得と教育/内田伸子』

『発達心理学 ことばの獲得と教育』の書評です。

発達心理学―ことばの獲得と教育 (岩波テキストブックス)

発達心理学―ことばの獲得と教育 (岩波テキストブックス)

 

著者の内田伸子さんは発達心理学・認知心理学の専門家。

NHK「おかあさんといっしょ」番組開発や、ベネッセ「こどもちゃれんじぷち」の教材「しまじろうパペット」を考案されている方だそうです。

内田伸子教授のご紹介

 

以前読んだ内田さんの本が面白かったので著者つながりで借りてみました。

子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」

子どもの見ている世界: 誕生から6歳までの「子育て・親育ち」

 

 こちらは子供をもつ親御さん向けの本でやさしい語り口調でしたが、今回の本は「発達心理学」のテキスト。

うってかわって内容も文体も内容もお堅くて、はじめは読み進めるのが大変でした…(°▽°)

 

発達心理学の歴史からはじまり

  • 哺乳類としてのヒトの赤ん坊の特性
  • 赤ちゃんが世界を認識する過程
  • 母語・第2言語・会話・読み書きの能力の獲得とそれに伴う認知機能の発達

について、膨大な論文や図表を用いて解説されています。

 

感情表現がどんどん豊かになっていくムスメと重ねて読むととても興味深かったです。

 

心に残ったことメモ

赤ちゃんの認知能力の高さ

乳幼児は身体発達の面を除き、認知面については私たちが考えている以上に有能である。一方大人は私たちが考えているほど有能ではない。

『発達心理学 ことばの獲得と教育』内田伸子 P5

 

運動機能の未成熟さからみると、確かに乳児は「無能」であるかに見えるが、外界の刺激を情報として取り込み、反応する感覚機能の面では「有能」である。

(中略)乳児は出生直後から人と物の区別をすることができ、とりわけ人の表情に敏感であること、次に、言語の聞き分けの基礎となるような言語音の種類を弁別するためのカテゴリー知覚能力をもっており、言語音に対する特別な感受性がある(後略)

 『発達心理学 ことばの獲得と教育』内田伸子 P11

 

赤ちゃんを産んでみて驚いたことのひとつが、生まれて1・2か月の赤ちゃんでも周囲に興味津々でたくさんの事を感じようとしている(ように見える)ということでした。

 

新生児がどれだけ周囲のことを認識しているか研究した内容がたくさん載っています。

ほんの一部をご紹介すると…

  • 生後12時間の新生児でも人の言葉(母語はもちろん、外国語でも)のリズムに合わせて体を動かす。しかし人工的に合成された母音や物理音にはまったく反応しない
  • 乳児は生後2日目でも顔や同心円のようなパターンは他の図形よりも長く凝視する

などなど…

こういう知識を知った上で新生児期のムスメと触れあいたい・・・!と思いました。

 

母語と第2言語の獲得について

母語でも第2言語でも赤ちゃん~子供が「言葉を獲得する」には、単に発音・語彙・文法を学習・訓練するのではなく、子ども自身が楽しみながら文化に触れたり人とコミュニケーションをとることが必要だそうです。

 

また、幼いうちから2言語に触れさせることで、言語発達・認知発達の面ではメリット・デメリットの両方があるとのこと。

カナダのトロントに住む日本人の英語力を調べた研究で「入国した年齢が高い方が第2言語の習得に有利」という結果も出ていて興味深かったです。

 

養育放棄された子どもの言葉の育ち

長年に渡る虐待・養育放棄のために言葉やコミュニケーション能力を獲得できなかった子どもたちが救出された後の回復の経緯が紹介されています。

学習者向けの本だけあって、ショッキングな内容も淡々と記されています。

 

年齢相応の発達まで回復する子どもとそうでない子どもの差は「母親(または特定の養育者)と愛着関係」を築けたかどうか。

人間はコミュニケーションが無いと生きられない生き物なんだと、改めて感じました…。

 

 

とても読み応えのある1冊でした。

でも20年前の本なので、もっと新しい発達心理学のテキストも読んでみたいなあ。